王様と黒猫
翌日、俺は朝から行動を開始した。
何しろ誕生日はもう明日なのだから、一日を有効に使わなくてはならない。
中庭を管理している庭師を呼んで、今空いている花壇の場所を確認する。幸い噴水の周りを囲むようになっている場所が、次の花の入荷を待ってぐるりと空いていた。
場所をそこに決めると、早速庭師の指示を仰いで肥料を蒔いて土を耕す。なかなか上手くはいかなかったが、子どもの頃泥遊びをした様なあの土の感触が心地いい。
そんな土いじりを始めた俺の様子が珍しかったのか、いつの間にか見物する者が集まってきていた。
しかし気にしている場合ではなく、俺は一人黙々と作業を続けた。
土にまみれながらやっとそれを終えると、今度は頼んでおいた大量のひまわりの種をそこへ蒔く。一粒一粒丁寧に蒔き最後に土を被せて水をやる頃には、ぎらぎらと燃え盛っていた太陽はすっかり西へと傾いていた。
呑気に見物していた者達も、いつの間にかその姿を消していた。
メイドの一人が気を利かせてよく冷えた紅茶を持ってきたので、その場に座って花壇を眺めながらそれを飲んだ。
体は汗まみれ、洋服は土まみれになっていたが、俺は満足していた。花壇を見たシオンの喜んだり赤くなったりする顔を思い浮かべると、自然に笑みがこぼれてくる。