王様と黒猫
「――――やれやれ、仕事をサボって何をやっているかと思えば……」
いつの間にかジェイクが座っている俺の脇に立っていた。見上げると、後ろに手を組んで俺の作った花壇をじっと見ている。
「どうだ、間に合ったぞ! シオンの誕生日の為に、ひまわりの花壇を作ったんだ!」
少し誇らしげにそう言うと、ジェイクは何かを思い出したかの様ににやりと笑みを浮かべた。
「――――ひまわり、ですか」
「そうだ。シオンにちゃんと何の花が好きか聞いて植えたんだ。文句があるのか?」
「いえ……陛下は、黒猫嬢がどうしてひまわりを好きなのか御存知ですか?」
そういえば理由までは聞かなかった。プレゼントがやっと決まった事に浮き足だってしまっていたから。
俺がその理由を答えられないのを察したのか、ジェイクは言葉を続けた。
「似ているそうですよ――――誰かに」
「誰かに……?」
そう聞き返すとジェイクはおかしげに、クククと笑った。
――――ああ、そうか。そういう事か。
だからシオンはひまわりが好きだと言った時に、あんなに頬を赤く染めていたのか。
しかし俺は、ひまわりはむしろシオンに似ていると思っていた。天に向かって真っ直ぐに伸び、太陽の様に笑うあの笑顔が。
花壇作りで疲れていた体の中心に、ほわんとやさしい塊が出来てそれが自分の全てを癒してくれた。
シオンを想うと現れる、不思議な塊。
そんな事を考えていると自分も照れてしまった。ジェイクはそれを目ざとく見つけ、全く初々しいお二人ですね、と言いながらからかうように笑った。