王様と黒猫
「――――ところで、アレックス陛下」
「何だ?」
「明日すぐには……そんなに早く、ひまわりは芽を出して咲かない、というのは御存知ですよね?」
「………………」
今日蒔いた植物の種が、翌日すぐに芽を出して花を開かない事ぐらい、子どもでも知っている常識だった。
しかし俺は、忘れていた。
時間に追われて必死で花壇を作る事に夢中になってしまい、そんな事にすら気が付いていなかった。
がっくりと力が抜けてしまったが、もう今更どうしようもない。今から手配して、とりあえずひまわりの花束ぐらいは準備しておくしかない。
ジェイクはあきれたように、額に手をあてて溜め息を吐いた。
「う、うるさいぞ、ジェイク! ……ちょっと忘れていただけだ!」
慌ててそう答えたが、自分の顔が今沈みかけてる夕日の様に赤くなっているのが分かる。
ああ、このまま沈む夕日に溶けてしまえればどんなに気が楽だろうか……
ジェイクの嫌味な笑顔が目の端に映った。
しかしまだ芽を出してもいない、花壇のひまわりを見ながら想う。明日シオンは何を想ってこの花壇を見てくれるだろうか。
ひまわりの花に俺はシオンを思い浮かべるように
彼女も俺を想ってくれるだろうか
そう考えると、やはり明日が来るのが待ち遠しくてたまらなかった。
やがて日は落ち夜が来て明日にはまたギラギラとした太陽が、ひまわりの様なシオンの笑顔と一緒にやってくる。
【おまけ ① ひまわりと黒猫 END】