王様と黒猫
そしてそれを作っていたから、彼女は今日来るのが遅かったんだ。

あの魔物の様な未確認物体は、お転婆でじゃじゃ馬なシオンが初めて一生懸命作った菓子だった。


それなのに俺は何て事を言ってしまったんだろう。


急激に、津波のように罪悪感と後悔が押し寄せた。

無理しても、美味しくなくてもちゃんと食べてやればよかった。頑張ったな、と褒めてやりたかった。


でも今更気が付いても遅すぎる……


「やれやれ、これで解決ですね」

「何言ってるんだ、ジェイク。何も解決なんてしてないぞ!」

「どうしたらいいのか、ご自分で考えなさい。陛下と黒猫嬢の喧嘩は犬も食いませんから……この場合は黒猫も食わない、ですかね」


そんな事を言いながらジェイクは部屋を出て行ってしまった。俺は未だに頭を抱えたままなのに。


シオンを傷つけるつもりなんて無かった。


しかしそんな事は今となっては、いい訳にしかならない。自分の苛々を彼女にぶつけてしまったのは確かだった。

外はすっかり日が暮れて夜になっていたが、雨はまだ降り続けている。

明日、シオンは逢いに来てくれるだろうか。

降り続ける雨はまるで彼女が泣いている様だった。




















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