王様と黒猫
その翌朝も雨が降っていた。雨の季節だからだろうか、止む気配も無い。
時間になっても、やはりシオンは顔を見せなかった。
それが気になってしまい仕事も上の空。
今日は各部署との共同定例会議だというのに、意見を求められてもろくな返事は出来なかった。だから会議に列席していたジェイクに、途中何度か睨まれたが、そんなのをかまっている余裕も無い。
昼前になって、その捗らなさにとうとう痺れを切らしたジェイクが、直接文句を言いに来てしまった。その頃にはもう俺は会議を諦めて、さっさと私室へと戻ってしまっていたのだ。
「アレックス陛下」
「なんだ、ジェイク……悪いが今日はもう何もする気になれん」
ベッドに横になり、くるりと背を向けそう答えると、ジェイクはあきれたように大きく溜め息を吐いた。
それでも出来ないものは出来ない。会議より気にかかる事が、今の俺にはあるのだから。
「本当に仕方の無い人ですね」
そんな嫌味を言われたが、俺はジェイクに背を向けたまま返事は返さなかった。
「では、陛下がその気になるように、お二人でよく話し合ってください」
「――――え?!」
お二人?
その言葉に驚き起き上がって振り返ると、そこにはもうジェイクの姿は無く、困った顔をして俯いたシオンが立っていた。
あいつがいつの間にシオンをここへ連れてきたのかは分からない。しかしそこに立っているのは、確かに彼女だった。