王様と黒猫
「……分かりました。では、アレックス陛下は会議に戻ってください。ソフィアはこちらで預かりますので」
「ちょっと! ジェイク! 理由も聞かないでそんなのずるい!」
「ソフィア、黙りなさい」
少し声を強めると、彼女はぷうっと頬を膨らませ顔を背けてしまった。こうなってしまうと彼女の対応は果てしなく面倒なのだが、仕方が無い。
アレックス陛下を何とか言いくるめ仕事に戻らせる。
執務室を出る時にまた彼女を挑発するような言葉を投げつけたが、ソフィアは仏頂面のまま私の仕事用の机に腰掛け、反応はしなかった。
やれやれ……
彼女が陛下の被害者だというのは知っていた。あのマイペースで我が儘な王様に毎日振り回され、困り果てているというのも。
しかしあの場はああ言って治めるしかなかった。どちらもよく似た引かない性格なのだから。
「…………ジェイクはずるい。いっつも陛下の肩ばかり持って」
机に腰掛け浮いた足をぶらぶらさせながらソフィアは言った。完全に拗ねている、そんな様子だ。
「なら、ここへ来なければいいではありませんか」
「…………意地悪」
意地の悪い事を言ったつもりは無かったが、彼女はまたぷいっと顔を逸らすと立ち上がり本棚へ向かう。そこにはいつの間にか彼女が持ち込んだ飴玉の瓶が置いてあった。
色とりどりの飴の入った透明な瓶。
光を受けて瓶が反射すると、中の飴もキラキラとガラスのように光を放つ。手にするとそこから一つ取り出して口に放り込んだ。