王様と黒猫




――――甘いものを食べると幸せな気分になれるのよ。




以前彼女がそんな事を言っていたのを思い出した。

ソフィアは病的なまでに甘いものが好きだった。砂糖の塊のような菓子を平気で口に放り込む。

しかしそうする時は決まって何か問題を抱えている。

陛下の我が儘にウンザリしていたり、ただ単に機嫌の悪い時だったり。そんな時は何も言わずに甘いものを食べ始める。

今日はきっとその両方なのだろう。いつの間にかさっき口に入れた飴は食べ終わったのか、二つ目の飴を選んで口に入れた。


「ソフィア」


名を呼びながら近づくと、彼女は私に背を向けてしまった。


「あなたはもう少し、我慢を覚えなさい。いちいち陛下を相手にしていたら、キリがありません。彼はあなたをからかいたいだけなのですから」

「分かってるわよ! ジェイクの馬鹿!」


彼女の怒りの矛先はいつの間にか私に向かっていた。さっき陛下を一方的に擁護したのがよほど気に入らないのだろう。

背を向けたまま、また飴の瓶の蓋を開ける。


「そんなに食べると、太りますよ?」


ソフィアは忠告を無視して三つ目の飴を口へ入れた。飴玉の数が彼女の機嫌に比例する訳では無いだろうが、盛大にへそを曲げていることは確かだった。




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