身代わりペット
窓際に置いてある、なんて事はない一人掛けの小さいソファー。

私は夜景が一番キレイに見えるここがお気に入りで、大体このソファーに座っている。

「ここが何だって言うんですか?いつもここに座っているじゃなですか。今さらそこは俺のお気に入りだった、とか言うのはナシですよ?私、散々聞きましたからね」

居候のクセに横柄な態度かな?とは思ったけど、私がここに座る事はちゃんと課長の許可を得ている。

それなのに、ここに座っている私が悪いと言われても納得出来ない。

「確かに、そこの席は君に譲った。しかし、あの時は俺も気付いていなかったんだ。その位置が……そこの位置が……」

課長が唇を噛みしめ、バッ!と天井を指さし、

「エアコンの風の吹き出し口の真上なんだよ!」

と、全力疾走でもしたかの様にハァハァと息を切らして叫んだ。

「…………は?」

私はより一層意味が分からなくて、首をかしげる。

その私の反応に、なんで分からないかな~、と課長が頭を抱えた。

いや、私の方が頭を抱えたいよ。

「その位置にいると!エアコンの風で中条の髪がふわふわ揺れて俺の我慢がきかなくなるの!」

指さした手をブンブン振り回して、さも私が悪い!みたいな抗議をして来るので、半ば呆れてしまった。

「……つまりどう言う事ですか?」

まあ、大体の予想は付くけど一応聞いてみる。

「頭を撫でまわしたい」

急に真顔になる課長。

それを見て私は小さく息を吐き出し、持っていたコーヒーをテーブルに置いて課長の横に寄った。

< 101 / 193 >

この作品をシェア

pagetop