身代わりペット
ちなみに、千歳には全てを話している。

アパートが火事になった事は知っているし、めちゃめちゃ心配してくれたからその後の事を全て話していた。

千歳に話した事は、課長も知っている。

と言うか、課長がちゃんと話をした方がいいんじゃないか?と言ってくれたんだ。

だから、千歳は今私が課長の家にお世話になっている事を知っている。

度々ペットの代わりをしている、とは話していないけど……。

「別に課長一択にしなくても、晴れてフリーになったんだし他の人にも目を向けてみれば?まぁ、課長みたいな人がそばに居たらちょっと難しいかもしれないけど」

「う~ん……」

そうなんだよね。

別に課長に拘らなくても、他に良い人だっているのかもしれない。

でもやっぱり、課長の事を考えちゃうんだよね。

最初はそりゃ気を使っていたんだけど、慣れた今では楽しいし。

なにより、課長と一緒に過ごす事に幸せを感じつつある。

これってどう考えても……。

「もう課長を好きになっちゃった?」

「え!?」

急に千歳に言われてドキッとした。

「……千歳さんは人の心が読めるんですか?忍法か何かですか?」

「んなワケなかろう。おぬしの顔にそう書いてあるわ」

「本当でござるか!?」

私はバッグから鏡を取り出し、自分の顔を確認する。

「……本当に書いてある訳ないでしょ」

千歳が冷ややかな視線を送って来たので、私は鏡をそっと閉じた。

「そんだけニヤニヤしていたら誰だって分かるわよ」

「そんなにニヤニヤしてた?」

「そうね。気持ち悪いな、って思う位にはニヤニヤしてたかな」

「あ、気持ち悪いんだ……」

そこはちょっとショックだったけど、そんなにニヤニヤしていたのか。
< 107 / 193 >

この作品をシェア

pagetop