身代わりペット
「ま、自覚したんだったら話は早いんじゃない?」

「と言いますと?」

「一緒に住んでるんだから、アプローチの仕方なんて山程あるでしょ?もういっそ、既成事実作っちゃったりとか」

「き、既成事実!?そんな事出来ないよ!」

千歳の言葉に、ボフンッと顔から火が出た。

「え~、なんで?もういい大人なんだし、そっから始まってもいいんじゃない?」

「いやいや千歳さん……」

たまにアナタの思考に付いて行けないよ。

「てか、課長みたいな優良物件、うかうかしていたら簡単に取られちゃうわよ」

「それはそうだけどさ」

だからってそんな高度な技、私には出来ないよ。

課長を誘惑出来るくらい経験ある訳じゃないし、色気だってない。

今だって、完全にルイちゃん(猫)扱いだし。

それに、和矢と別れたばかりなのに課長の事が好きなんて言ったら軽い女だって思われたりしそうでちょっと怖い。

「ま、モタモタして後悔しないようにね」

千歳に釘を指される。

「うん……」

ウジウジしているのはよく分かってるんだけど、恋愛なんて久し振りだから色んな事を忘れちゃってる。

和矢と最近まで付き合ってたって言っても、恋愛をしていた関係、とは言えなかったし。

しかも若干その事があって、先に進むことを躊躇っている自分がいる。

だって、課長に告白をしてもしフラれたら、こんな短期間に2回も失恋する事になるんだよ?

20代も後半になって来て、こんな何回も失恋するなんて心が持ちそうにない。
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