身代わりペット
応接室の前。

もちろんお茶は持って来ていない。

多分、部長さんが来るのは本当だろうけど、時間が違う気がする。

コンコンコン――。

ノックをすると、「どうぞ」と中から聞こえる。

「失礼します」

そう言って中に入ると、やっぱり取引き先の部長さんはいなかった。

いつも思うけど、良からぬ事をしているみたいでドキドキする。

応接室には2~3人掛け用ソファー1つと、1人掛け用ソファーが2つ置いてある。

課長は当たり前の様に2~3人掛け用ソファーに腰を下ろし、ポンポンっと膝を叩いてニコニコしている。

(会社でこんな事していて良いんだろうか……?)

私は課長の隣に腰を下ろし、毎度お馴染み膝枕をされる。

課長がポケットからクシを取り出し、私の髪を梳かし始めた。

「取引き先の部長さんって〇×商事の部長さんですか?何時に来られるんですか?」

一応聞いとかないと、もしもこんな場面を見られでもしたら大変な事になる。

「ん?んーっと、あと1時間後位かな」

「そうですか。でも私も業務があるので10分位が限度ですよ」

そうクギを指すと、「分かってるよ」と頬を膨らませてブーたれる。

鼻歌交じりのご機嫌な課長を見て、私も少し目をつぶった。
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