身代わりペット
家を出る時、一人で行こうと思って用意をしていたら「俺も一緒に行く」と言われたので、デートっぽい!と舞い上がってソッコーOKを出したんだけど、よくよく考えたら課長も何か欲しい物があって付いて来たのでは?と思い始めた。

でも課長の返答は違った。

「いいや?特に欲しい物はないよ。ただ、中条と一緒に出掛けたかったんだ」

不意の殺し文句?と爽やかな笑顔に、私のハートは射抜かれた。

「あ、そ、そうなんですか?」

ドキドキを悟られない様に、一生懸命平静を装う。

(えぇーー!?それってどう言う意味!?)

私と一緒に居たかった、って解釈で合ってる!?

そうだったらどんなに嬉しいだろう。

「あ……」

「え?」

私が一人で舞い上がっていると、課長のつぶやきと同時に課長のお腹がグゥゥゥっと鳴った。

え!?と思って時計を見る。

針は14時5分を指していた。

「す、すみません!こんな時間になってるの気付きませんでした!お腹空きましたよね!?何か食べに行きましょう!」

私はアワアワと慌てて課長に頭を下げた。

プレゼント選びに夢中で、全然気が回らなかった。

「謝らなくて良いよ。俺もお腹空いていた事忘れるくらい楽しかったし」

課長は少し照れ臭そうにお腹をさすっている。

「あの、連れ回しちゃったお詫びとお礼に今日は私がご馳走するんで!行きましょう!」

私は、「え、そんなの悪いよ」と言う課長の手を掴み、ズンズン歩き出した。

ここからだといつも行っているカフェが近い。

課長に合う様な高級なお店じゃないけど、お腹空いている課長をそんなに歩かせたくないし、味は美味しいお店だからそこに行く事にした。

「ここでいいですか?」

お店に着いて尋ねると、課長は「中条のおススメの店か?なら良いよ」と嫌な顔一つせず、またまた大人な対応を見せた。

(せめて今日は、お店の中で一番高い物をご馳走しよう!)

そう心に決めて、お店に入った。
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