身代わりペット
千歳はしばらくケーキに集中だろうから、私も何か食べようとメニュー表に手を伸ばす。

「おっ。この期間限定のパスタ、美味しそう」

ボソッと呟くと、

「それ、ランチセットで頼んだ方が色々付いて来てお得だよ」

ケーキを頬張りながら、千歳が別になっているランチメニュー表を手渡して来た。

ほうほう、とそれを見ると、確かにパスタの他にミニグラタンが付いたりミニサラダが付いたりスープが付いたりして値段もお手頃。

「こないだ食べたら味も美味しかった」

「へ~。んじゃこれにしようかな。あ、すみません」

近くを通った店員さん(国枝さんじゃない)を呼び止め注文をすると、「それ2つお願いね」と横から千歳が声を掛ける。

「ランチセットのAをお2つですね。少々お待ちください」

店員さんが頭を下げ、厨房へと注文を通しに戻る。

「そんなに食べて平気?」

言ってもケーキを1ホール食べている。結構ボリューミーなランチセットまで食べきれるのか?

……いや、千歳なら平気か。

「全然だいじょーぶ。ケーキは別腹だから」

あ、やっぱりね。

細いクセに大食漢。

羨ましい限りだ。

「このランチ、いつ食べたの?」

メニューを見ると、どうやら最近始まった期間限定のランチみたいだった。

「こないだ、紗月が実家に帰るのにここで別れた時」

「ああ、あの時にはあったのね」

くそ~!私もその時一緒に食べたかったなぁ!

そう悔し気に言ったら千歳が、

「アンタはあの時ここに居なくて正解だったわよ」

とため息交じりに呟いた。

「え?なんで?」

「なんでも」

「なによ、途中で止めないでよ。最近の千歳、おかしいよ?変な事毎日の様に聞いて来たり、今みたいに意味深な発言だけして理由を教えてくれないし」

「時期がくれば分かるわよ。…まあ、そんな時期、来ない事をアタシは祈ってるけどね」

お冷に入っている氷をガリガリ砕きながら食べている千歳が、吐き捨てる様に言った。

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