身代わりペット
ここから出よう、と言ったのは課長の方なのに、動く気配がまっっったくない。

かと思ったら、まるでバスケットボールをドリブルするかの様に軽快に、尚且つリズミカルに頭をポンポンポンポンし出した。

(人の頭で遊んでる?)

チラッと、目だけ動かして課長を見上げてみると、メチャクチャ笑顔。

(おっ、なんだ?)

課長は、まだうっすらと赤く充血している目をキラキラと輝かせながら、満面の笑みを浮かべていた。

(えっ、と……?)

私はこの行動の意味がよく分からなくて、どうしたものかと悩んだ。

「あ、あの、課長?」

ずっとこのままではいられないから、意を決して疑問を課長に投げ掛ける。

「なにを……してらっしゃいます……?」

「……………………………」

私の問い掛けに、何も答えない。

と言うか、聞こえていない様だった。

笑顔になったのは良いけどいい加減止めて欲しくて、課長の腕をガシッ!と掴み、『ストップ!』と叫んだ。

ピタッ、と課長の動きが止まる。

しかし課長が動きを止めたのは一瞬で、今度は私の頭を撫で回し始めた。

「ちょっ!?なにするんですか!?」

私は掴んだ腕に力を入れて、動きを止めようとする。

そうすると課長は反発して力を入れて来るから、私は体ごとブンブン揺れた。

「か・ちょ・お~~~~~?」

あの、怒って良いですか?


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