身代わりペット
何もない、とは言った物の、何もなくはなかった。

(やっぱり誰かの視線を感じるんだよね……)

今、帰宅途中も、誰かに見られてる様な、つけられている様な、そんな感覚でちょっと怖かった。

(でも特に誰かいるって訳じゃないんだよ)

そう思ってハッとする。

(もしかして、もうこの世にはいない存在が……っ!?)

いやいやいや!と首を振る。

そんな怖い事を想像するのは止めておこう。

チラッと課長を見ると、横に座ってコーヒーを飲みながら経済新聞を読んでいる。

(課長に相談してみようか?)

でも、自分の勘違い、または思い違いかもしれない。

(変に心配とかかけたくないし、言わなくても良いか)

はぁ……とため息を吐くと、やっぱり視線を感じる。

(大丈夫。この視線の主はちゃんと目に見えてるし存在も確認出来るから)

クルっと横を向くと、目をキラキラ輝かせて私を凝視して膝をポンポン叩いている課長。

(着替えて来たかったんだけどな……)

一番最初に部屋に行って着替えてくれば良かった。

(待て、出来るかな?)

しかしそんな事は出来るはずもなく、私はそのまま課長の膝にダイブするのであった。

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