身代わりペット
ザザザ――……。ザザザ――……。

と言う波の音が、心地よく耳に響く。

「お寿司、美味しかったですね~」

「そうだな」

私達は、海がすぐ近くにある歩道を並んで歩いていた。

「風が心地いいですね」

「ああ」

バスに乗って来たから、バス停までの道のりを歩く。

私達は特に何か喋るでもなく、歩いていた。

(こう言う時間、好きだなぁ)

無言でいられる時間が苦に感じない相手とは相性がいい、って何かで聞いた事があるけど、あれって本当かな?

(でもあれって、どっちかが一方的にそう思っていてもダメだよね)

私がそう思っていても、課長がどう思っているかが分からない。

だから、私と課長の相性が良い、とは今の段階では言い切れない。

(遊園地も楽しかった)

急に連れて来られた時はちょっと焦ったけど、久し振りに来たもんだから意外とはしゃいでしまった。

(お化け屋敷以外はね……)

お化け屋敷の事を思い出して、頭をブルブル振った。

(楽しい事、思い出そう!)

私は、メリーゴーランドにいたたまれなく乗っていた課長を思い出してクスッと笑った。

(課長、顔真っ赤だったな)

余程恥ずかしかったのか、終始俯いていた。

一緒に乗っていた女の子達が不思議そうに課長を見ていたっけ……。
< 137 / 193 >

この作品をシェア

pagetop