身代わりペット
フフフと思い出し笑いをしていると、急に横から腕を引っ張られてよろけた。

「わっ!?」

そのままの勢いで、課長の胸にポスン…と顔を埋める。

「あっぶないなぁ。なんだあの乱暴な運転の車は……」

爆音で走り去って行く一台の車。

課長がブツブツ呟いているので顔を上げた。

「中条も、ボーッと歩いていたら車に轢かれるぞ」

「あ、はい。すみません……」

どうやら、今の車から私を避けてくれたみたいだった。

まったく…と文句を言いながら、私を車道側じゃない方に引っ張ってまた歩き出した。

定番ではあるけど、こう言う事をされるとキュンと来てしまう。

へへ…とニヤニヤしながら不意に手に視線を下げると、課長に手を握られたまま。

「……あの、課長?」

「どうした?」

「もう、大丈夫ですよ?」

「え?」

「手」

「手?」

私が指さした手を課長が視線で追う。

「なんだ?嫌か?」

「え……?い、いえ!嫌じゃないです!!」

私は課長の言葉に高速で首を振った。

「そうか。じゃあ問題ないだろう?」

「……はい」

手を繋いだまま、歩き出す。

課長の手は大きくて温かい。
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