身代わりペット
「今日はありがとうございました」

「ん?」

「あの遊園地、私も小さい頃に家族とよく来た思い出の場所なんです。閉園前に来れて良かったです。……デートみたいですごく楽しかったし」

最後の、デートみたいで、はちょっと勇気を出して言ってみた。

課長、どんな反応するかな、って。

「『みたい』じゃなく、俺はデートのつもりだったんだけど?」

「へ……?」

「あ、ホラ、バスがもう着てる。走ろう」

「わっ!」

繋いだ手をそのまま引っ張られ、私達は走り出す。

え?デートのつもりだった……って、どう言う事!?

デートって、恋人同士がするもの、だよね!?

えぇ!?

走りながらパニックになる私の頭の中。

バスの扉が閉まる寸での所で乗車した私達は、息を切らせて一番後ろの席に座る。

パニックになっているから、私の息切れはより大変な事になっていて……。

(さっきのどう言う事なんだろう)

聞きたいけど、ノリで言ったんだよ、なんて軽く言われたら立ち直れなさそうな気がして、聞けずにいる。

(でも、ずっと手を握ってくれてるし、ちょっとは期待しても良いの、かな?)

バスの中でもずっと繋がれていた手は、私を期待させるには十分な材料だった。
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