身代わりペット
私は携帯を手に取って、メールの受信箱を確認する。

和矢からのメールを全て遡って確認する為だ。

この一か月以内に和矢から何らかのメッセージが送られて来ていない事と、私が別れのメールを送っている事の確認が取れれば、まだマシかもしれない、と考えた。

「あ…ダメだ……」

私は受信箱を確認してガクッと項垂れた。

「あの時、千歳に言われて和矢からの履歴全部消したんだった……」

アドレス、着信履歴、発信履歴、メッセージのやり取り全て。

と言う事は、

「こっちからなんの確認も出来ない……」

と言う事だった。

もし『別れたくない』と言う趣旨のメッセージが来ていたんだとすれば私の落ち度だし、もし来ていないんだとすると和矢の言い分がおかしな事になる。

しかし、全てを消し去った今ではそこの確認が出来なかった。

「どうしよう……」

これは、課長に真相を確かめて告白、なんてしている場合ではなくなった。

明日までにどうにかしなければ、訴えられてしまう。

そんな事になったら、私の携帯にはなんの証拠も残っていないからお金を払わなければならない。

「100万円なんて払えないよ。どうしたら良いの……」

私は八方塞がりになってしまい、頭を抱えたまま眠れない夜を過ごした。

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