身代わりペット
ピピピピッ――、ピピピピッ――。

アラーム音でハッと目を覚ます。

音の出所である目覚まし時計を見ると、時刻は8:30。

「え!?」

完璧に寝過ごしてしまった。

どうやら考える事に疲れてウトウトしてしまったらしい。

「朝ご飯!!」

勢いよくベッドから飛び起き、部屋から飛び出る。

「――わっ!!」

部屋の前を通り過ぎようとした課長が、勢いよく開いたドアに驚きのけ反る。

「ビックリした……」

「あ、ご、ごめんなさい!」

「いや、大丈夫だよ」

課長はパタパタと足早に玄関へと向かう。

「あ、課長!」

「すまない、俺は先に出るよ」

課長は腕時計を確認しながら靴を履いている。

「あの……!」

「すまない、帰ってからにしてもらえるかな。もう時間が……」

再度時間を確認する課長は、少しイラ立っている様にも見える。

確かにもう出社しないと遅刻ギリギリの時間。

こんな所で足止めさせている場合ではなかった。

「あ、はい。今日はすみません。私もすぐに出ます。お気を付けて……」

「ああ、行って来るよ。中条も気を付けて」

「はい。行ってらっしゃい」

そうお辞儀をすると、課長は少し慌てて出て行ってしまった。

シーン、と静寂が辺りを包む。

課長を引き留めて、なんて話をするつもりだったのか?

朝から「私、元彼に訴えられそうです」なんて事聞かされたって、課長も困るだけなのに。

「……私も行かないと」

ボソッと呟き、急いで支度を済ませて私も足早に家を出た。
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