身代わりペット
和矢が今、何が目的で何がしたいのかがよく分からずにいたけど、こう言う事だったんだ。

(私が逃げられない様に、ここまで追い詰める気でいたんだ……)

和矢は自分の正当性を訴え、私一人だけを悪者にし、孤立させてどうにも出来なくなるまで追い込むつもりでこんな事をしている。

(なんで…?なんで私がこんな目に合わなくちゃいけないの!?浮気して裏切っていたのは和矢の方なのにっ……!)

私の目には、涙が溢れて今にも零れ落ちそうだった。

しかし、ここで泣いたら負けた様な気がして、グイッ!と袖で涙を拭く。

(――っ!?)

その瞬間、和矢と新井麗子が顔を見合わせて微かに笑い合っているのが見えた。

それを見た私は、頭の中ですべての事が腑に落ちた。

(和矢と新井麗子はグルだ……!!)

そう言えば最近、新井麗子が私の周りをウロ付いていた事を思い出した。

(あれはもしや、私と課長の写真を撮る為!?帰り道、後をつけて来ていたのも新井麗子だったんじゃ!?)

さっき本人が『証拠集めを手伝った。写真を撮ったのもワタシ』と豪語していた。

じゃあ、それは何の為?

ウソまででっち上げて、何の為にこんな事をしたのか。

(まさか……2人で共謀して慰謝料をふんだくる為!?)

そこまで元彼が落ちぶれたとは思いたくなかったけど、そう結論付けるとすべての事に合点が行く。

でも、そんな事が分かってもなにも証拠はないし、確実に今は私の方が劣勢だ。

今さら私が何を言った所で、みんなは信じてくれないだろう。

(なんにも出来ない……!)

ギュッと拳を握る。

俺様の勝ち、と言う顔をしている和矢を私は睨み付けた。

「あんれ~?なにその顔!?自分がクソビッチだったのに、ワタシ被害者です~みたいな顔するのやめてくんない?」

「ほんっと、マジ最低~~」

和矢に釣られて、新井麗子まで私を罵倒して来た。

唇を噛みしめ、2人の思う壺なこの状況に私の体が怒りで震える。
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