身代わりペット
「まず最初に、いつから私達はお付き合いをしていたのでしょうか?明確に想いを伝えあった記憶はないのですが」

「えっと、いつから……。そうだな。一緒に住んでる内になんか夫婦みたいだな、と思い始めて、中条と一緒に居るのが楽しくて、そしたら好きになってて……。でも、確かに明確に想いを伝えあってはいなかったけど、俺はちゃんと意思表示をしていたぞ?」

「え?」

課長の言葉に、私は驚いた。

意志表示?そんな記憶、私にはないけど……。

「いつですか?」

「えっと…あれは確か……あっ、中条が火事の報告をしに実家に帰った時かな。あの時、お母さんが持たせてくれたご飯を食べながら今後の事も含めてお母さんに報告したい、って電話してもらったじゃないか。あとは何度もデートをしたし、それに手も繋いで、膝枕だって――」

「ちょ、ストップ、ストーップ!!」

次々出て来る話に付いて行けず、待ったをかけた。

「なんだ?」

課長が唇を尖らせ、不服そうな顔をしている。

「ちょっと待って下さい。あの時の電話って、そう言う意味だったんですか?私てっきり、料理のお礼を言いたいんだとばっかり……」

「違うよ。あの時の会話、よく思い出してみなさい」

「え……」

課長に言われて、薄っすらしか残っていないあの時の記憶を必死で呼び起こす。

(えっと確か、課長がお母さんが作った料理を食べながら……)

『俺もお母さんに挨拶した方がいいよな。今後の事もあるし……うん、美味い』

とかなんとか。

あと、私が「そんなのいいですよ……」みたいな事を言ったら、

『そうは行かないよ。結婚前の大事な娘さんと暮らしているんだ。男としても、上司としてもちゃんとしないと……うん、かぼちゃも美味いな』

とも言ってたような。

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