身代わりペット
「あの…もう一つ、聞いても良いですか?」

「うん。なんだ?」

そうだ。

私は一番重要な事を確認出来ていない。

「迫田課長は……」

「うん?愛実?愛実がなに?」

「課長は、迫田課長をどう思っていらっしゃるんですか?」

「え、どうって……?」

私の言っている事が分からない、と言う表情で首を捻る。

「この間、ルイちゃんの命日に課長、寝言で『メグミ』って言ってました」

「えっ。愛実の名前を……?」

私の言葉に少し考えて、ああ……と課長が笑った。

「もしかして、愛実が飼っていた『メグル』の事かな?ルイと仲良しの猫で、よく一緒に遊んでたから。あの日、夢に見ていた気がする」

「え、メグル……?」

確かに、聞き間違えてもおかしくない程よく似ている名前。

え、じゃあ、なに?

『メグミ』と『メグル』を聞き間違っただけ?

「心配する事ないよ。俺と愛実がどうこう、なんてありえないから」

課長がハッキリと断言する。

「……なんでそう言い切れるんですか?」

男と女に「絶対」なんて言葉はない気がする。

「ん~……。愛実すまん」

課長が頬っぺたを掻きながらボソッと呟いた。
< 180 / 193 >

この作品をシェア

pagetop