身代わりペット
「中条」

課長が私の手を取り、すまなかった、と頭を下げた。

「え……?」

「言葉にしなきゃ分からないよな……。想いが通じ合ってる、なんて何も伝えずに俺一人で舞い上がってた……。本当にすまない」

「課長……」

シュン…と萎れている課長がなんだか愛おしくなっちゃって、私もギュッと手を握り返した。

「良いんです。私も何も言わないでズルズル今まで来ちゃって……。ルイちゃんの代わりだ、って思ったら、なかなか言い出せなくって。でも、もっと早く想いを告げていれば良かった……」

「中条……ありがとう……」

2人で、えへへと笑って抱き締め合う。

しばらくすると、課長が「ん?」と言って体を離した。

「どうしたんですか?」

「中条。今、ルイの代わり~とかなんとか言ってなかったか?」

「はい。言いました。……違うんですか?」

首を傾げる私に、課長が声を荒らげた。

「違うっ!俺は断じてそんな事思っていなかったぞ!そりゃ、一番最初はそうだったかもしれないけど、その後も今も、そんな事は一切思ってない!」

「そうだったんですか?じゃあ、膝枕してくれたりしたのも全部違ったんですか?会社でだって……課長?」

話しをしていたら、課長の顔がゆでだこの様に真っ赤に染まって行く。

なんだ?どうした?

「課長、顔真っ赤ですよ?」

そう言って課長の顔を覗き込んだら、「あ~!もうっ!!」と課長が急に叫び出してビックリした。

「ど、どうしたんですか!?」

「白状する!白状するよ!」

プルプル震えながら課長が続けて言い放った。

「中条に……触りたかったんだ!!」

と。
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