身代わりペット
「…………?」

しかしいつまで待っても重ならない唇に、チラッ……と薄目を開けると、課長がプルプル肩を震わせて何かに耐えている様だった。

「か、課長……?」

これはもしや……。

「だああぁぁぁっ!!我慢出来ないっ!」

と突然叫んだかと思うと、課長はおもむろにポケットからブラシを取り出し、ソファーへと走り出した。

「中条!おいでっ!!」

と、ソファーに座った課長が膝を高速でポンポンポンポンッ!と叩いた。

……さっきまでの甘いムードは一体どこへ?

「今、ルイちゃんの代わりなんかじゃないって言ってたのに……」

せっかく両想いになってムーディーな雰囲気にまで行ったのに、これじゃ台無しだ。

「ん?何か言ったか?」

「……いえ、なんでもありません」

「じゃあ、早く!」

キラキラ瞳を輝かせて待機している課長を見たら、もうなんでも良いや、と投げやりな気持ちになったのは言うまでもない。

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