身代わりペット
課長は何をそんなにキラキラした目で私を見ているんだろう?

『君がいたんだ』って、私は入社した時からいましたよ?

「あの、言っている意味がよく……」

首をかしげながら、苦笑いにもなっていないような笑顔を顔に張り付けなんとか笑う。

「その髪っ!」

「きゃっ!」

急に頭を掴まれ、ビックリして叫んだ。

これじゃ、屋上の時と同じじゃない!?

「だから、なんなんですかさっきから!!」

頭に乗っている手を振り払い、キッ!と課長を睨んだ

課長は「やっぱり……」とかブツブツ言いながら自分の手を涙ぐんだ目で凝視して、体をプルプルと震わせている。

ちょっと気持ち悪い。

背筋にちょっと寒い物を感じた私は、原因も分かったし、話しの途中だけど早めにここから撤退しようと立ち上がる。

「課長、私そろそろ……」

「ルイの毛並みだっ!!!」

「うわっ!」

急に叫ばれて、ビクッ!と持ち上げたカバンを落とす。

「へ?」

「だから、中条の髪だよ!」

「か、髪?」

「そう、髪の毛!」

そう言われて、無意識に自分の髪の毛を掴む。

「屋上で触れた瞬間、ハッとしたよ……。中条のその髪質、ルイの毛並みにそっくりなんだ!」

鼻息の荒い顔をグイっと近付けられ、のけ反る。

髪質!?

確かに、私の髪は細くて柔らかい、いわゆる『猫っ毛』ってやつだ。

オマケにくせ毛も混じっているから、結構タチの悪い髪質をしているんだけど。

「その細くて柔らかい、ふわふわした毛質。ルイもそうだった。長毛だったから、毎日のブラッシングは欠かせなくて……」

一人で興奮している課長を、私は顔を引きつらせながら見ている。

毛質が似ているからなんだと言うのか。

それだけで、何をそんなに興奮しているのだろう?

ええっと、状況をちょっと整理してみよう。
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