身代わりペット
「他なんていないんだよっ!中条じゃなきゃダメなんだ!頼むよ!この通りっ!」

急にガバッ!と頭を下げられ、私はギョッとした。

(お昼の時もだけど、そんなに必死になる!?)

ぐぬぬぬっ!

助けてあげたい気持ちはある。

私なんかに頭を下げるなんて屈辱でもあるだろうし、身体的にも余程辛いんだと思う。

でも、和矢の事を考えると、簡単に首を縦に振る事が出来ない。

だって引き受けちゃったら、四六時中一緒にいなきゃいけなくなるって事でしょ?

そんなの無理。

「課長、やめて下さい。頭を上げて下さい」

「いや!中条が首を縦に振ってくれるまで、俺は頭を上げない!」

「頭を下げられても引き受けられません。頭を上げて下さい」

「いやだっ!」

「無理なモノは無理です。頭を上げて下さい」

「頼むっ!」


それからしばらく「頭を上げろ」「上げない」の攻防戦が続いた。

しかし、何を言っても本当に頭を上げない課長の決意にとうとう私も根負けし、

「ああもうっ!分かりましたよ!だからいい加減、頭を上げて下さい!!」

と、なかばヤケクソ気味に叫んでしまった。


シーン……と広い部屋に静寂が訪れる。

課長がゆっくりと顔を上げ、ニヤリと笑った。

(や、やられた……)


この日から私は、課長の『ペット』になったのだった。

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