身代わりペット
「ほんっと和矢ったら、ありえない!!」

ビール大ジョッキを一気に飲み干し、ダンッ!とグラスをテーブルに叩き付ける。

「まあまあ、そんなにカッカしなさんな。おにーさーん!生2つねー!」

千歳が手を上げて店員さんに注文をしている。

向こうの方で店員さんが「喜んで!」と言っていたから、注文は通っただろう。


ここは私たちがよく来る居酒屋。


和矢にドタキャンされてヘコんで歩いていたら、千歳から

《あ、紗月?まだ課長と一緒?じゃなかったらこれから飲みに行かないー?ケンが急に接待入ったとか言って、暇になっちゃったんだよね~》

と言う電話が入った。

あ、「ケン」って言うのは千歳の彼氏さんね。

丁度ムシャクシャしていたし、一人でいるのがなんだか寂しくて食い気味に『行くっ!』と返事を返した。

「ねえ」

「ん?」

「千歳の所はなんでそんなに仲が良いの?高校から付き合ってるんでしょ?別れ話とか出た事ないの?マンネリとかは?」

ほとんど絡み酒みたいな感じになっているけど、ずっと気になっていた事を聞いてみた。

「ん~そうだなぁ。別れ話みたいなのは一度あったかなぁ」

「えっ!?」

やさぐれながら焼き鳥を食べていた私は、意外な返事が返って来てビックリした。

「え、なんで!?聞きたい!」

食べていた焼き鳥をお皿に戻し、前のめりになる。

「そんな面白い話でもないよ?しょうもない喧嘩だったし」

「いい、いい!」

私は鼻息荒く、首を縦にブンブン振った。

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