身代わりペット
「それにしても、どうしたんだろうねぇ」
「うん……」
課長は、私が新人の時の教育係で、とてもお世話になった人。
今でも冗談を言い合ったりする位、仲が良い。
そんな人がこんなに落ち込んでいる姿は痛々しくて、正直、見ていられない。
「課長になんの躊躇もなく話しかけるのアンタ位なんだからさ、聞いてみなよ」
「うーん……こないだ聞いてみてもやっぱり『なんでもない』って言われちゃったからさぁ。あんまりしつこいのもねぇ……」
誰にも言わないけど、私には話してくれるんじゃないか、みたいな傲りがあって、その時はちょっとヘコんだ。
「アンタら仲良いのにね。実は付き合ってんじゃないか?って噂が立ってる」
「はっ!?」
突然、聞いた事もない話になり、私は手と顔を思いっきり振った。
「いやいや!私、彼氏いるから!」
「わーかってるって。だからそれはアタシが否定しといたよ」
「そ、そっか。ありがと」
私はホッと胸を撫で下ろす。
そんな変な噂が彼氏の耳に入ったら、たまったもんじゃないからね。
それでなくても、今ギクシャクしてるってのに……。