身代わりペット
私は私で、目をつぶって課長の手の温かさを感じる。

(やっぱり、この手の感触なんだよなぁ)

少しすると、サワサワサワ、っと課長の手が動き始めた。

気配で、笑っているのが分かる。

課長は、マッサージの才能もあるかも。

絶妙な力加減で頭を撫でるから、フワフワと気持ちが良くなってくる。

チラッと課長の様子を伺ってみると、顔色が良くなって来た気がする。

すると、課長のお腹から「グゥゥゥ~キュルルル~~」とお腹の鳴る音が聞こえた。

「プッ」

ゲンキンな課長に、私はなんだかおかしくて笑ってしまった。

「笑わないでくれよ。食欲がなくて、最近まともに食っていないんだ」

いつの間に取り出したのか、クシで私の髪を梳きながら言った。

これはこれで気持ちが良い。

「あ、ごめんなさい。って、最近っていつからですか?」

「2、3日前位からかな。無理やり食べてみても、喉を通って行かなくてね。水くらいしか口にしていなかったんだ」

「そうだったんですか」

通りで、顔色が悪かった訳だ。

「でも、今聞いた通り、お腹が空いて来たみたいだな」

そう言っている間も、課長のお腹はリオのカーニバル並みに鳴っている。

そりゃお水しか飲んでいなかったら、そうなる。
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