身代わりペット
…………あれ?

なんの反応もない。

ぎゅっと瞑った目を、そろ~っと開けて課長を見てみると、課長はあらぬ方向を凝視したまま動かないでいる。

「あの、課長?聞いてまし、た?」

「中条」

「はい?」

「あれ、君のアパートじゃないか?」

少し先を行っていた課長が、角を曲がった先を指さして言った。

「へ?」

確かに、そこの角を曲がっての突き当りには、私が住んでいるアパートがある。

課長は、指を指したまま動かない。

(な、なに?)

私は駆け寄り、曲がり角から顔を覗かせてアパートの方を見た。

「……えっ!?」

アパートの前には複数の消防車と救急車が止まっていて、辺りが騒然としている。

「え、なっ!?」

火事!?

さっきから消防車や救急車が向かっていた先は、私のアパートだったの!?

「行こう」

突然の事に硬直していると、課長に手を引かれ、ハッとする。

「は、はい!」

私たちは走ってアパートに向かった。
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