身代わりペット
「なので、明日は裏返して行けば大丈夫です」

そう言ったら、課長がなるほど、と頷いた。

「そうか。まあ、状況が状況だから、説明すればみんな分かってくれるとは思うけどな」

「はい」

「じゃあ、解決したと言う事で……」

課長がニコッと笑い、スッと私に手を伸ばして来た。

(え、もうっ!?)

課長の家に行くと決めた時点で覚悟はしていたが、こんなソッコーで来られるとは!

肩をすぼめ、ギュッと目をつぶる。

しかし、そんな覚悟とは裏腹に、課長は私の頭を優しく撫でるだけで他には何にもして来なかった。

「……へ?」

「今日は疲れただろう?風呂に入ってサッパりして、もう寝てしまえ」

優しい手と、優しい笑顔。

「課長……」

「じゃあ俺はもう寝るから。おやすみ」

「あ、お、おやすみなさい!」

私は慌ててお辞儀をする。

課長は手をヒラヒラと振り、自室に入って行った。

私は頭を押さえ、一人廊下にポツンと取り残される。

この展開は想像していなかったから、大分と拍子抜けしてしまった。

てっきり、ルイちゃんの代わりをするんだと思っていたから。

なんとなく、安心したような、ガッカリしたような、複雑な気持ちになる。

「……お風呂入ろ」

ボソッと呟いて、さっき説明されたばかりの浴室へと入った。

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