身代わりペット
冷蔵庫からミネラルウォーターを一本取り出す。

500mlのペットボトルだったから、コップに開けずにそのまま飲んだ。

ふぅ、と一息ついて、リビングを見渡す。

相変わらず何にもない。

「殺風景……」

ペットロスからなかなか抜け出せないのは、この部屋のせいもあるんじゃないだろうか?

だだっ広いこの部屋に、テレビとソファーとテーブルがあるだけ。なんの生活感もない。

夜景も綺麗に見えるし、一見スッキリしてカッコよく見える。

けど、実際ここに住んだら、と考えてみると私には多分無理だ。

「だって寂しいもん」

こんな寂しい部屋に一人でポツンといたら、ペットロスの症状も悪化しそうだ。


特に眠くもないし、しばらくボーっと夜景を見ていたら、背後のドアが開く気配がして振り向いた。

「あれ、まだ起きていたのか?」

頭をタオルで拭きながら、課長がリビングに入って来た。

お風呂上り?の様で、キッチンに向かい冷蔵庫から同じミネラルウォーターを取り出す。

「あ、はい。なんだか眠れなくて……」

そんなに時間が経ったかな?と思って時計を見ると、30分位ボーっとここに居たようだった。

「まあ、あんな事があった後じゃ無理もないよな」

夜景を見ている私の横に、スッと課長が立つ。

水を飲む仕草でさえカッコよくて、私はドキドキしながら目をそらした。

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