身代わりペット
「大家さんから連絡はあったか?」

「いえ、まだ何も……」

「そうか。もう遅いもんな」

「はい。……多分、新しいアパートを探す事になると思います」

さっきチラッと大家さんが言っていた。

「倒壊の恐れがある」と。

って事は、多分建て直しか、もういっそ更地にするかの二択だろう。

どっちにしろ、あのアパートはもう駄目だと思う。

角部屋だったし日当たりも良好で、好きだったんだけどな、あのアパート。

「そうか……」

「はい……」

そうなると、アパートを探すまでの間、どうしたら良いだろう。

すぐにいい物件が見付かれば良いけど、なかなか見付からなかった場合、その間ホテル住まい?

(いや、そんな贅沢は出来ない)

じゃあ、実家から通う?

(それもちょっとなぁ)

私の実家はここから電車で二時間程離れている。

通って通えない距離じゃないけど、ギリギリまで寝ていたい私にとってはちょっと厳しい距離だ。

最終手段で、漫画喫茶とかどうだろう?

(ちょっと怖いな)

色々考えるけど、思考が全然まとまらない。

「はぁ……」

大きなため息が出る。

さっきから、この先の事を考えてはため息を吐いて、の繰り返し。

せっかく綺麗な夜景が目の前を埋め尽くしているのに、全然心が晴れない。

「彼氏には連絡入れたのか?」

「え!?」

唐突な課長の言葉に、ドキッと心臓が飛び跳ねた。

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