身代わりペット
「は~~~、疲れた~~!」

ドサドサッと、玄関前に持って来た荷物を下ろす。

「鍵、鍵っと」

カバンの中から、あの花のキーホルダーが付いた鍵を探して取り出した。

今、外から見えたこの部屋の明かりは点いていなかった。

だから多分、課長はまだ帰って来ていない。

さっきは勝手に入れないって思ったけど、こんな荷物を持って待っていたら通路をふさいじゃうし、そうなったら逆に迷惑だから入らせてもらおう。

「よいしょ」

邪魔になりそうな荷物をドア前から避け、鍵を鍵穴に差し込もうとした瞬間、勢いよく玄関のドアが開いて、私は叫んで飛び退いた。

「わっ!……びっくりした~~~」

目の前には、なんとも言えない顔をした課長の姿。

帰っていたのか。

明かりが点いていないから、てっきりまだ帰って来ていないのもだと思ってた。

「あ、帰っていたんですね。お帰りなさい」

そう言った瞬間、課長が顔を真っ赤にし、プルプルと震え出た。

「おかえりなさいじゃないだろう!どこに行っていたんだ!?俺より先に帰ったハズなのに家にはいないし、探してもどこにもいないし、電話しても出ないし、なかなか帰って来ないし、心配したじゃないか!!」

と一気に捲し立てられ、私は、口をパクパクさせる。

課長の怒鳴り声を聞いて、隣の住人が「揉め事?」と迷惑そうな顔をしながら出て来てしまった。

「あ、す、すみません!なんでもないんです!ごめんなさい!」

私は慌てて頭を下げ、持って来た荷物を急いで玄関に投げ入れ、課長も中に押し込めてドアを閉めた。

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