俺様室長は愛する人を閉じ込めたい~蜜愛同居~
「ああ、片桐君ですか?女性で最短で主任になった海外事業部の社員ですよ。いつも、冷静沈着で仕事もでき、男女問わず信頼も厚いですよ」

まるで自分の事のように笑顔で言う、緑川の表情などまったく気づかず、大輔は塔子を目で追いながら言葉を発した。

「結婚は?」
不意に出たその言葉に、大輔自身が驚いた。

しかし、緑川はそんな事を気にする様子もなく答えた。
「え?いや、独身ですよ。少し前に彼氏とも別れたって部下が騒いでたので。人気あるからすぐ噂になるんですよ。彼女」

(別れたばかり……)

でも、大輔は塔子に声を掛ける事が出来なかった。

しかし、同じ会社にいる事、今の塔子を見てしまった事は、大輔にとって昔の気持ちを思い出させるのに十分だった。
その後、何度か大阪に行った時は、常に目で追っていた。

みんなに頼られて、一生懸命自分を犠牲にしてでも頑張る姿は、昔と変わらなかった。

そんな塔子に、自分が声を掛けていいのか悩んでいる時に、塔子の東京支社への異動が決まった。

東京に来てからも、働く塔子を遠くから見ていた。
大阪で聞いた通り、塔子を狙う男の影も多かった。

そして、なにより、一人でがんばる塔子を、もう一度守りたい衝動が抑えられなくなった事に気づいた。
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