俺様室長は愛する人を閉じ込めたい~蜜愛同居~
「そう……。帰ってたんだ。あの街に……」
冷静に言ったつもりだったが、変な空気を含んだことに自分で気づいた。
そんな塔子の言葉に、大輔も意味深な空気をまとわせ塔子を見つめた。
「お前は帰ってなかっただろ?」
(あなたに会いたくなかったから……)
その言葉を塔子は音にすることができず飲み込んだ。
塔子は大輔に会いたくない一心で、ほとんど実家に帰っていなかった。
親不孝な事は百も承知だったが、どうしても大輔に会う気にはならなかった。
そんな思いを忘れるように、塔子は食べ終わると箸をおいた。
そして、ビールを片手に塔子をじっと見ている大輔を見た。
「千堂室長は、私の事はなんでもお見通し何ですか?」
塔子は感情を出さないように静かに言うと大輔を見据えた。
「まさか……。わからない事だらけだよ。お前の事は」
少し悲し気な表情をした大輔は、じっと塔子を見つめ返した。
そして、しばらくお互いの視線が絡み合った。
塔子は何も言葉を発することができず、押し黙った。
「それと、その呼び方やめろ、またキスするぞ」
沈黙を破った大輔の少し怒りを滲ませた声に、塔子はドキッとした。