俺様室長は愛する人を閉じ込めたい~蜜愛同居~
19時40分

まだ社長も千堂も来ていないようで、塔子はホッと息を吐いた。


千堂大輔……。

塔子にとって思い出さないように、何重にも鍵を掛けたパンドラの箱だ。

「だいちゃん……。ねえ。だいちゃん」
甘ったるい自分の声が頭の奥で警告音を鳴らす。
まだ、12歳の幼い自分の声が。

千堂大輔はいわゆる塔子にとって、幼馴染という物にあたる。

小さいころから側にいるお兄ちゃん。
それがいつしか初恋に代わるのは自然の流れだった。
塔子にとっては。

最後に合ったのは塔子が17歳、大輔が就職で東京に出た22歳の春だった。

「お待たせしました。片桐さん」
その声で塔子はハッとして振り返ると、千堂が微笑を湛えて塔子を見つめていた。

「お疲れ様です、社長は?」
塔子はポーカーフェイスを崩さずに、少し目線を逸らすと問いかけた。

「もうすぐいらっしゃいます」

「そうですか」

千堂の口調からは、何も読み取ることができず、塔子は諦めて思考を中断すると、意識を仕事モードへと変えた。


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