俺様室長は愛する人を閉じ込めたい~蜜愛同居~
(最近塔子変わったよな。少し柔らかくなったというか……)

晃は塔子の変化に焦りを感じていた。

(男の影??誰?)

いなくなった塔子の席をしばらく見つめていた。

晃が初めて塔子を意識したのは、研修4日目だった。
もちろん入社式の時から、隣の席にいた凛としたキレイな同期に目を奪われていたが。

少し慣れてきた合同研修は100人を超える新卒がいたため、広い会場の後ろの席で、晃は隣の塔子を無意識に見ていた。

「どうしたの?」
ふいに声を掛けられ、慌てたのをはっきりと覚えている。
長い髪をゆるくハーフアップにし、リクルートスーツを身に纏っていても、スタイルが良いのがわかった。

「いや。あの人誰だっけ?」
とっさに、壇上にいた人を聞いた。
「え……?あれ、ここの副社長でしょ?知らなかったの?」
小声の中にも、塔子は驚いた顔をした。
もちろん、咄嗟の質問で副社長の顔ぐらい知っていた。
バツが悪くなって、どうしようと思っていた晃に、

「ふふ、度忘れ?樋口君でもそんなことあるんだ?」
その笑顔と通常のクールなギャップに一目ぼれだった。

正式に配属になり、塔子が大阪に行ってしまった時は心底がっかりした。

それから、数年はたまに思い出すぐらいだったが、塔子が東京に帰ってきて、今度こそという思いが募っていた。

晃は、自分の飲んでいたコーヒーの紙コップをゴミ箱に捨てると、

(さあ、俺も負けないぐらい仕事しますか……)
首をぐるっと回すと、晃は自分の席に戻った。
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