俺様室長は愛する人を閉じ込めたい~蜜愛同居~
千堂が口を開きかけたその時、その不穏な空気を断ち切るように社長の声が聞こえた。
「二人ともまたせたね」
「社長、お疲れ様です」
塔子は慌てて社長を迎えると、頭を下げた。
チラリと千堂を見ると、すでにいつもの秘書の顔に戻っていた。
「お車が回っております。片桐さんもこちらへ」
笑顔で促され、塔子は言われる通り千堂と社長の後を追った。
連れてこられたのは、敷居の高そうな料亭だった。
「片桐君、かしこまらなくていいから」
時期に還暦を迎えるようには見えない社長は、にこやかに塔子を見た。
まだまだ現役という風格と、若々しい体系。そんな社長に一瞬目を奪われ照れたように塔子は目を伏せるとお礼を述べた。
「ありがとうございます」
そして塔子は、お酌をするためにビール瓶に手を伸ばし社長を見た。
「いい、いい。接待じゃないんだから。美味しく食べなさい」
優しい笑顔に少し塔子は安堵して頷いた。
「ほら、千堂君も」
社長は千堂にも声を掛けた。
「ありがとうございます」
千堂はきれいな所作で箸を持つと、料理を食べ始めた。
(昔から綺麗な箸の持ち方だよね……)
また過去の千堂の事を思い出し、慌てて塔子は思考を中止した。