さよなら流れ星
あんなにあたしの自慢だった兄も、今ではその存在を友達にも言えないような人になってしまった。
そんな汚い自分も嫌だし、そんな人間になってしまった兄も嫌だった。
兄が引きこもるようになってしまってから、家の空気が変わったのも嫌だった。
お母さんがあんまり笑わなくなったのも、時々帰ってくるお父さんが必要以上に笑うようになったのも、そのことに気づいていてなにもしようとしない自分も、なにもかもが、嫌だった。
だからあたしは家が嫌いだ。
だから今日も、いつもの公園のベンチにひとりで座って、スマートフォンの画面を見つめる。
さっきまであんなに騒いでたのに、いざひとりになるとどうしようもない孤独感が襲ってくる。
それが怖くて、通話履歴の一番上に残るその番号を押した。
なんであたしはこの人と毎日電話をしてるんだろう。
顔も見たことない。直接会ったこともない。そんな人なのに。
本当はわかってる。
あたしは、自分の心の隙間をなにかで埋めたいだけ。
それがなんなのか、誰なのか、そんなのどうでもいい。
ただ、誰かと繋がってる。誰かがあたしを待っていてくれる。そんな確信があればいい。
ただそれだけのために、流星を利用している。
ただそれだけのために、昨日も『また明日』なんて言ってしまったんだ。