さよなら流れ星
『──約150年ぶりに、フォルトゥナ流星群が夜空に大出現します。ピークは8月15日頃となっており──』
ラジオの電源を切ると、痛いくらいの静寂が耳を突き刺した。
普段は付けっ放しにしているラジオだけれども、このときばかりは我慢できなかった。
なにが、流星群だ。
ラジオのアナウンサーが悪くないことはわかっている。
それでもそのニュースがあまりにもカンに触るものだったから、古びたラジオめがけて思い切り舌打ちをかました。
どうせ流星群なんて見れるわけがないのに。
見れないとわかっているのに、なぜわざわざ伝えるんだろう。
叶わないとわかっている夢ほど虚しいものはない。
おさまらないイライラに気づかないふりをするように入っていた布団に顔を埋めると、扉がノックされた音が耳に入った。
…また、隆さんか。
上半身を起こし重い腰を上げ、扉へと向かう。
裸足の裏で触れた床の冷たさに思わず身震いをした。
時計を見ると、時刻はまだ7時半。
訪ねてくるには随分と早い時間だ。
隆さんはしょっちゅう僕の部屋にやってくるけれど、常識外の時間に来たことはない。
なんとなく違和感を覚えながら、寝間着のまま部屋の扉を開けた。