さよなら流れ星
僕の言葉にぐっと唇を噛みしめる隆さん。
そのまま小さく首を縦に振って、虚ろな瞳で僕の目を見つめてきた。
まるで、声を出したら何かが溢れ出てしまいそうだ、とでも言うかのように。
すると隆さんは僕に背を向けて隣の部屋へ歩き出した。
ついて来い、ということで良いんだろうか。
慌てて靴を履いて隆さんの後に続く。
何も言わないから、ついて行って良いってことなんだろう。
扉を出てすぐ隣、『種崎』と書かれた表札が掲げられた部屋。
ここが隆さんと莉央ちゃんが暮らしている場所だ。
コンコン、と控えめにノックをして「莉央、帰ってきたぞ。」という優しい声とともにその部屋の扉を開ける隆さん。
僕も「おじゃまします。」と囁くように言いながら後に続く。
部屋の中は真っ暗でひと気がない。
本当にここに莉央ちゃんがいるのか、と心配になるくらいだ。
「パパ、おかえり…流星お兄ちゃんも、こんにちは。」
暗闇に目が慣れてきたのとその声が聞こえてきたのとで、莉央ちゃんの居場所がわかった。
部屋の端、僕から見て左側に二段ベッドがあり、莉央ちゃんはその下の段で寝ているようだった。