さよなら流れ星




ごちゃごちゃ考えるより先に、体が動いていた。


指先に触れる冷たい感覚。
それを引き寄せて、手のひらの中におさめる。

ここまできたら後戻りはできない。
初期設定のままの待ち受け画面には、8時6分、と表示されている。


もうあの子は起きているだろうか。
そんなことを考えながら、通話履歴の一番上にあるその番号をタップした。


プルルル、プルルル、と、聞き慣れた電子音が鼓膜を震わせる。

きっと起きてない。だって夏休みだ。部活には入ってないって言ってたし、こんな朝早くに起きている理由がない。


そうやって出なかったときのために言い訳をしながら、それでも期待してしまっている自分がいる。

だって、彼女と電話が繋がったこと自体、奇跡みたいなものなんだから。


『──はい、もしもし。』


そんな奇跡が起こったこの子ならば、きっとこの電話にも出てくれるって、ちょっとは信じたって良いだろう?




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