さよなら流れ星
「…何かあったっちゃあったけど、ひなたの声が聞けたから、もう大丈夫だよ。」
呟いた言葉はコンクリートの天井に溶けて消える。
また少しの沈黙が流れ、電話越しにひなたが大きくため息をついたのがわかった。
『流星ってさ、意外とそういう恥ずかしいこと言うよね。』
「は、恥ずかしい?」
『なんていうか、ロマンチストっていうのかな?小説に出てきそうな言葉、よく使うよね。そういうとこ嫌いじゃないけどさ。』
ロマンチスト。
その言葉に思わず顔が真っ赤になって何も言えなくなる。
たしかに、付き合ってもいない女の子に「声が聞けて良かった」なんて、よっぽど自分に酔っていないと言えないセリフだろう。
「ぼ、僕…本が好きだから、そのせいかも。気を悪くしてたらごめん。」
向こうから姿は見えないのに、とっさに深く頭を下げた。
そりゃ、好きでもない男からこんなことを言われたら、普通誰だって気持ちが悪いと思うはずだ。
僕の声がよほど暗く聞こえたのか、ひなたはまたしても『そんな落ち込まないで!』と慌てたように言う。
『あたしはむしろ…嬉しかったよ?そう言ってもらえて。』