さよなら流れ星






たいして考えることもしないままキーボードに指を走らせる。
別に誰かに見せるわけでもないし、ただの自己満足だ。
クオリティなんて気にしない。


ストーリーなんてあってないようなもので、ただ、私の妄想をつらつらと書き連ねただけの文章たち。
優しい家族に囲まれて、信頼できる友達がいて、大好きな恋人に愛されて。
そんな平凡な少女が、ただ同じような日々を淡々と、それでも幸せに過ごしていく話。


「…はあ。」


気晴らしに書いているものだけれど、気分が乗らない日だってある。今日はどうやらその日らしい。


気分転換のために外に出てきたのに、なにも気分なんて変わらない。むしろイライラが募っただけ。


八つ当たりをするようにスマホをベンチの端に投げる。あ、と思ったときには遅かった。大きな音を立てて落下するそれ。


昔からあたしってこうだ。ちょっと嫌なことがあると、すぐ感情的になって物に当たる。
ダメだとは思うけど、気づいた時にはもう遅い。だから、どうしようもない。


もしかしたら画面が割れちゃったかもしれない。けどそれを確認することすら億劫で、首から下は動かさずにぼんやりと空を見上げた。



今日は心なしか、いつもより星が綺麗だ。


こんなに空は綺麗なのに、なんであたしの心はいつだってぐちゃぐちゃなんだろう。

星を見てただ素直に「綺麗だ」って思える時が、あたしにもあったはずなのに。

今は、もやもやした雲のような感情が邪魔をして、それすら叶わない。




< 4 / 58 >

この作品をシェア

pagetop