特別な君のために

ロビーで五十嵐先生が

「良かったよ! 最高! たとえ誰が何と言おうと、私はあなた達の歌声がナンバーワンだと思っているから」

そう言って、涙ぐんでいた。


ロビーから座席へと移動して、全国大会の合唱を最後まで聴く。

同じ課題曲を歌っていても、やっぱりそれぞれの学校の個性が出る。

面白いな、と思いつつ、その表現方法や声の出し方、間の取り方、ブレスの入れ方などを見て、聴いて、吸収する。



いよいよ、審査結果の発表の時間がきた。

TVカメラが入っているので、あまり引き伸ばさず、次々に学校名が発表される。

うちの高校は、なかなか呼ばれない。


全く呼ばれないまま終わるのか、それとも……。

みんなで祈った。私はカエルの隊長を胸にこっそり抱えて。

なるみはまた「天国のお父さん……」と言っている。



「さて、いよいよここからは金賞を受賞した学校の発表です。金賞一つ目の学校は……エントリーナンバー八番、北海道帯広中央高等学校」

え?

今、うちの高校、呼ばれた?

一瞬、会場も静まり返った。

そのあとですぐ、近くの座席から雄叫びがあがった。

「マジかーーーーー!」

「きゃああああーー!」

なるみが号泣している横で、私もカエルの隊長を抱きしめて泣いた。

ハンカチを出している余裕がなかったのは、後になって後悔することになるのだけれど。
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