特別な君のために

最後に会場全体で課題曲を歌って、コンクールが終わった。

この後すぐ、会場を出てホテルへ戻ることになっていたので、慌てて記念撮影などをした。

……みんな、泣きはらしてひどい顔をしていたけれど、これもまたいい思い出。


「あ、美冬、三重が治ってるよ!」

「え、ホント? ちょっと鏡で見てみる!」

なるみにそう言われて確認してみると、確かに二重に戻っている。だけど。

「あのさー、これ、まぶたが腫れてるから今だけなんじゃない?」

「だから今のうちにしっかり寝て、その二重をキープしておけばいいじゃないの」

「でも今日はもう、興奮して眠れないかも」

「あはは。私も眠れないだろうなー。そんな時こそ勉強か……」


この大会が終わったら、私達はもう、部活動から引退する。

放課後の居場所が、講義室や音楽室から、学校図書館に変わる。

それがすごく寂しいけれど、やり残したことはないという満足感もいっぱい味わった。


今夜からは、部活という目標が消えて、受験だけになる。

私の人生を左右する出来事が、この一年で盛りだくさん。

これからも一つずつ、逃げずに当たって砕ける勢いでいこう。

頭の中でこのフレーズを唱えた時、奏多先輩を思い出した。

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