特別な君のために

大会の次の週、星路学園大学の大学祭へ行くため、私は早朝に家を出た。

ひとりで公共交通機関を乗り継いでいくことで、受験当日も自分ひとりで行けるという自信につながるから。


大学の最寄りの駅についた時にははもう、お昼を過ぎていた。


……学校の前に着きました。

指示された通り、奏多先輩にメッセージを送ると。

『美冬、後ろ~!』

「え? うわああああ!」

スマホを落としそうになるほど驚いた。

黒いポロシャツにデニムの、奏多先輩がいきなり肩を叩いてきたから。


リアルな奏多先輩に会うのは、久しぶりだ。

会えてすごく嬉しい気持ちと、照れくさい気持ち。

「ひどいじゃないですか~! 不意打ちとは卑怯ですよ」

「ははは、驚かしてごめん。じゃあ、どこから回ろうか?」

「えっと、チャペルが見たいです!」

「チャペル? うーん、今は何も催し物やってないと思うけど」

「いいんです。憧れの場所だし、ここで合格できますようにって祈っておこうと思って」

「なるほどね。じゃあ、行こうか」

< 116 / 179 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop