特別な君のために
いろんな人でごった返している場所を通り抜け、静かな道を歩く。
「チャペルはこの奥。毎日礼拝があって、時々卒業生同士が結婚式を挙げるんだ」
「嘘! 結婚式もできるんですか?」
「ああ、できるよ。ただし、新郎新婦共にここの卒業生じゃないとダメなんだってさ」
「そうですか。でも、憧れます……」
「まずはここの学校に合格しないと、このチャペルも使えないけどな」
「ううう、そうでした」
そんな話をしているうちに、チャペルへ着いた。
ドアは解放されており、誰でも見学できるようになっている。
ベンチがずらっと並び、正面に大きなパイプオルガンと、十字架が見えた。
「想像したのより、ずっとシンプルですね。マリア様とか天使はいないんですか?」
「それ、カトリックだから。うちの大学はプロテスタントなんだ。だから飾りは少ないよ」
「全然知りませんでした。恥ずかしい……」
「いや、俺も大学に入ってから知った。ここ、キリスト教学が必修だから」
少しだけ建物の中を歩き、ホール独特の声の響きを確かめる。
「ここで歌えたら素敵だろうな~」
するとすかさず、奏多先輩が言った。
「歌えるように頑張りましょう。そして祈りましょう」と。